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「市場調査」を再考しよう。本当に「市場」を掴んでいるか?
オーナーズエージェント株式会社  代表取締役 藤澤雅義
CPM R(不動産経営管理士
いかに入居者に支持される賃貸住宅をつくることができるか?こういった問いは随分昔からされてきたことであろう。
「入居者ニーズ」を考えよう、何を入居者が望んでいるのか、と。
そう、入居者が何を望んでいるのか?をもっとマーケティングリサーチの手法に忠実に、基本的なことから考えるべきではないか。
その点、我々が属している、この「アパート・マンション業界」ともいうべきこの世界においては、わりとそういうこと無しに営業をしてきたのではないか。他の業界になら当たり前にある「マーケティングリサーチの手法・分析による企画」というもの無しに。

たとえば、あるメーカーがある商品を世に出そうとするとき、必ず消費者の分析をし、アンケート調査をするであろう。
どういった層がどういった商品を望んでいるのか、と。
1)まず、どういった購入層が世の中にいるのか、ということである。10歳代とか、20歳代とか40歳代とかいうふうに。

2)そして、次にその年代ごとにどういう志向性があるのかということを調査するであろう。「商品に対する志向」を探るのだ。

3)そして、既に市場にどういった商品が存在しているのか、ということも当然調査するであろう。また、その既存の商品への人気度、支持といったものも測定するであろう。
最近、コンビニに行くと「大人のチョコレート」なるコピーの商品が見受けられる。
おそらく菓子メーカーは、まず、1)で、どの層が自分の商品のお客さんなのか、を冷静に見ているであろう。

2)ではその各層がどういった志向を持っているのか、と調査しているはずである。
「大人のチョコレート」は、「健康とおいしさを考えた大人のチョコレート」とか「1箱でポリフェノール1700mg」とかあるから、どうやら、最近の消費者はそういった方面に関心がある、と「睨んだ」はずである。
アンケート調査をしたら何%だったのかは知らないが、そういうチョコレート購入にも健康志向?があるという結果が出たのであろう。

そして、3)で、では実際に今の市場でそういう商品があるか、まったくないのか、それとも似たような商品があるのか、それはどのくらいの売れ行きなのか、を調査するであろう。
そういう市場分析の結果、「チョコレート効果」、また「CACAO72%」とデカデカと赤い字で表現された商品がコンビニに陳列されるようになったのだ。メーカーというものはそういうものだと思う。

では、「賃貸アパート・マンション業界」はどうであろうか?私は以前ハウスメーカーに勤務していたことがあるが、お客さんから土地情報が上がって測量図が手に入ったら、即座に設計部に持ち込んで、「ファミリータイプでいいんじゃないかな。設計よろしく」とか、「ちょうど、うちのこの標準プランがこの土地にハマルな。これでいこう」とか、もうそれは、なんの調査もへったくれもなくて、その人のカンというか、まあいい加減にプランを決めていたものだ。 

なぜ、35平米の1DKになったのか、と問われれば、ちょうど、この土地にうまく入ったのだ、一番に建築面積が稼げるのだ、といった「建築屋の論理」でしかない。
そのエリアでどんな人たちがその1DKを借りるのか、全体でいうとどのくらいの「支持」のある間取りなのか、という問いには答えられようもない。

そんな調子でもやっていけるのは、この業界は、「新築マジック」「新築魔力」「新築ご褒美」のある業界だからだ。
とりあえず「新しい」うちはその魅力でなんとかなってしまう。入居者に支持される割合が低い間取りや企画であっても、最初はなんとか室になるのだ。「満室で引渡し」である。

そして、オーナーにはその状態がずっと30年間続くという幻想を抱かせることが可能なのである。
自分の物件の「真の力」を知らずに。「メーカー」なら当たり前にやるしっかりとした市場調査を我々もすべきである。
さきの1)にあたるものは、まず、その賃貸住宅を建てようとする商圏エリアにおける入居者の層を見極めることである。

分類は、
a 単身者

b カップル(夫婦、同棲)

c 未就学児を持つ夫婦

d 小学生以上の子を持つ夫婦

e その他母子家庭や三世代入居等である。
そのエリアにこれらの分類でいうと各層はどのくらいの割合で部屋探しをしているのか、をまず押さえよう。
意外に単身者が多いとか、カップルが多いとかの調査結果が出るのだ。
それなら、それらをターゲットにして、商品作りをしようとなるのだ。

2)に当たるものは、商品に対する志向性であるから、入居者がどういった企画を好むのか、という問題である。
それも、1)の各層ごとに、である。
アパート・マンションにおける商品企画でポイントになるものは、私はいままで20年以上の業界経験から次の4点であると思っている。
(A) 間取り

(B) 外観・外構(共用部分)

(C) 設備・仕様

(D) セキュリティ
(A)の間取りと(B)の外観が2大ポイントで、この二つでほとんど決まるといっても過言ではない。
まずは「間取り」である。間取りの取り方・設計にもっともっと時間をかけるべきだ。
時間をかけて考えれば考えるほどいいものができてくる。

この4つのうちの(A)以外の(B)(C)(D)は、全国レベルであまり変化ないような気がしている。
エリア特性が低いのだ。

降雪地域で「消雪・融雪設備」といった特殊性が出てきたり、セキュリティへの関心が都会とそれ以外では多少感覚が違うというものは あるが、大体、一般的にある「入居者ニーズ調査」で間に合う範囲ではないかと思っている。

しかし、(A)の「間取り」はこれは、そのエリアで調査をしないとだめであろう。
現実的に、そのエリアで払える賃料水準というものに差があると思われるし、また、同じ単身者でも、7畳くらいの1Kタイプが一番現実 的にニーズがある場合と、いや30平米くらいの10畳はあるタイプでないとだめだとか、いや、単身者でも2DKクラスの45平米程度の   広さで、なおかつワンベッドルームがいいのだ、とかエリア特性があるものである。

カップルや子持ち夫婦でも、45平米の2DKより60平米の2LDKや3DKのほうが、どっちがいいかと問われればそれは広いほうがいいというに決まっているが、現実的に払える家賃というものがあるわけで、現実的に払える家賃というものがあるわけで、どの広さが実際には一番ニーズがあるかという観点で調べなければならない。
より広くて快適な部屋だということと、入居者の現実的な支持というものは同じではない。

「75平米~80平米で3LDK」、そして、かなりお高い家賃で設定して、高層賃貸マンションを供給しているものを、この春もある地方で見たが、その企画意図がよくわからない。

1)の分類でいうとdの層を狙ったと考えられるが、その高い家賃でかつ非常に少ないシェアであるd層を狙ったということはかなり「ハイリスクな賭け」ではないか?
その地方でどれくらいそれらに合致する人がいるという調査結果が出たのであろうか?
また、そもそも「分譲マンション」「持ち家一戸建て」と賃料からいってまさにバッティングするものを供給するのも、リスクである。
私なら、その面積帯で企画するならば、持ち家とはまったく違う間取りで勝負するだろう。
持ち家志向の人たちと同じ土俵で戦いたくないからだ。
積極賃貸派が以前より増えたとはいっても、依然、持ち家志向の強さは相変わらずなのであるから、退去理由のトップが「マンション買いました」となっては困るのである。

3)に関しては、そのエリアを徹底的に調べ上げるべきだと考えている。
エリア内に、1K、1DK、1LDK、2DK、2LDK、3DK、3LDKの間取りがそれぞれ、何戸づつあるか、何戸空室があるか、そして、その他間取り以外の物件特性別の人気度はいかほどか、といったことを調べて企画している人はほとんどこの業界にはいない。

そして、誰もこのエリアにどういう間取りが何戸あるかという問いに答えられないのが実情である。
圧倒的にデータが不足している。まずデータを揃えなければ、何も考えられないではないか。
調べた結果、いろんなことが見えてくるものだ。

以上、1)、2)、3)の調査をした結果、いろんな矛盾や、入居者ニーズに市場が応えていないことが往々にしてわかってくる。

ターゲットを決め、どの商品でいくのかを論理的に決めることができるのである。
ここで敢えていうと、これら?から?についての調査前の実感値であるが、そのエリアで営業している不動産屋さんのカンは意外にあてにならない(失礼!)人も多いことも知っておくべきであろう。

人は思い込みというのが結構あって、冷静に調べると、普段感じていることと違う結果が出た、というのはよくあることである。だからこそ、まず「マーケティング」が基本なのである。

実は、最後に4)があって、それは、「将来性」である。

菓子メーカーと違って、こちらの業界は大変息が長い商売である。30年ローンなどを組むのであるから。
よって、現時点だけでなく、10年後、20年後の未来におけるニーズも予測しなくてはならない。
これは難しい作業とも言えるが、基本的に、人の志向がそれほど大きく変わることはないだろう。
しかし、たとえば、将来は1世帯あたりの自動車保有台数は増える傾向であろう、とかいうことは予想できる。
都会で無い限り、鉄道駅からの距離というものはほとんど関係ないものになってきて、車社会にどんどんなっている。設備として、駐車場の台数確保が重要なテーマだ。
賃貸住宅と違って、同じ集合住宅でも分譲マンションは比較的企画が簡単である。
購入者の層とイメージがある程度掴み易いからだ。そして、最大公約数的なもので、事足りるという現実もある。
しかし、最近では、分譲マンションも賃貸住宅の所謂「デザイナーズマンション」に影響されてか、差別化が顕著になってきている。もともとスペックが高いところでもって、なおかつ差別化されると、賃貸住宅では太刀打ちできない。

「市場調査」とよくいう。
ときどき建築営業マンさんが作った「市場環境調査書」なるものを見させていただくが、そのエリアの人口動態や就業人数を調べて、即賃貸志向の入居者は十分います。アパート建てても大丈夫ですといわれても、ではなぜ、このプランなのか?という問いにはまったく応えていない提案書になっていることが多い。これでは建築主も不安なままであろう。エリア内には空室が目立っているのに、なぜ、このプランだったらいいのか、の説明が不足しているのである。納得させられるだけのものになっていないのである。

今回、この青森の三沢地区の市場調査を小坂工務店さんは大変、真面目にかつ正確に行われ、いい分析をされた。
かつてこの三沢市でこれだけの詳細な分析をされた建築会社はないのではないか?
調査の結果、様々なことが分かり、このエリアでのアパート・マンションの建築企画に大いに役立つことになった。
投資家の方にとっては頼もしい限りではないだろうか?

これらの分析によって企画される物件は競争力が高く、収益性の高い物件になることは間違いないだろう。

私の会社には、「格言其の壱」として「一に現場、二に現場、三四も現場、五も現場」というものがある。
まず、現場を知ることが一番大事であり、それは物件をたくさん見て回るということであり、入居者ニーズを肌で感じるということである。
それらがないまま、建築企画などできないのだ。

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