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収益不動産に投資する際のリスクについて、その原因と対策を検討してみましょう。
(A) 市場賃料の下落
空室の発生と、それにともなう賃料の下落は、賃貸物件投資における最大のリスクです。
賃料の下落は、その要因によって大きく2つに分けることができます。
市場全体の賃料が下落してしまう「市場賃料の下落」と、物件それ自体に原因がある「物件賃料の下落」です。
市場賃料の下落は不況や環境の変化によるもので、予測することも回避することも困難です。
しかし一般的には、市場賃料は下がっても10年間で2割程度。しっかりした投資分析にもとづく計画なら、賃貸経営は比較的リスクの少ない投資分野だといえるでしょう。
1) 物価の下落(デフレーション)
いま私たちが直面している「平成大不況」がまさにこのリスクでした。バブルの崩壊を予測したのは、ごく一部の人にすぎません。官・民の違いや経営規模の大小を問わず、ほとんどの人は予測も回避も不可能でした。
ただし、賃貸用物件のなかにも大きく賃料を下げた「負け組」の物件と、ほとんど変わらない「勝ち組」の物件があることは注目に値します。「物価の下落」そのものの回避は不可能ですが、物価の変動の影響を受けにくい物件を企画し、建設することが大事だといえます。
2) 環境・市場の変化
物件周辺地域の環境の変化にともなうリスクです。過疎化の問題もありますし、大学や大規模事業所の移転、小中学校の統廃合など、地域全体の市場環境が変わることで、賃貸経営が大きな影響を受けることがあります。
また清掃工場などによる空気・土壌など環境の汚染、あるいは高速道路や幹線道路の開通による空気汚染・騒音公害もあります。
こうした環境の変化で、そのエリア全体の人気が下がることがあります。
鉄道の新設はプラス要因ですが、廃止はマイナスです。急行が止まらなくなった、ダイヤの変更、バス路線の廃止などもあります。
よりミクロの近隣レベルでは、隣に大きなビルができて日当たりが悪くなったり、深夜営業の店ができて環境・治安が悪化したり、暴力団・狂信的な団体の事務所が近くにきた、などの変化も悪影響をおよぼします。
(B) 物件賃料の下落と空室の発生
市場賃料は下がっていなくても、物件自体に起因する賃料の下落と空室が発生します。
こうしたリスクは、管理会社がきちんとした管理とコンサルティングをすれば、かなりのレベルでヘッジすることができます。
1) 企画の失敗
他の項目でもしばしば述べていますが、新築時には独特の「新築魔力」「新築マジック」で、なんとか決まってしまうものです。
それなのに、新築時から想定賃料で決まらないとすれば明らかな「企画の失敗」です。
それほどではなくても、1度退去したら次がなかなか決まらなかったり、数年で賃料を下げざるをえなくなるケースも、企画の失敗といえるでしょう。
このリスクは、PMが企画時から関わって、入居者のニーズをふまえた魅力的な物件をつくることによって回避することができます。
2) 間取りの陳腐化
間取りに対する入居者ニーズは、時代の進展にともなって変化していきます。
その変化に対応できない「陳腐化」した間取りは、当然のことながら入居者の人気を得ることはできず、空室の発生、賃料の下落というリスクにつながっていきます。
たとえばファミリータイプでは、いまだに50年前に発表された2DKの間取りが供給されていますし、一方では入居者の「広い部屋がほしい」というニーズに応えた1LDKの間取りに、なかなか踏み切れないのが現状です。
こうしたリスクは、PMが企画段階から関わることによって十分に回避できます。
入居者ニーズの大きな変動や地域特性にあわせた間取りを実現したり、引き戸などの活用によって少々のニーズの変化にも対応できる、柔軟な間取りにすることができるからです。
また中古物件の場合には、適切なリニューアルによって人気物件に蘇らせることも可能です。
3) 設備・仕様の陳腐化
入居者ニーズの変化は、設備・仕様の面でも陳腐化というリスクを発生させます。
たとえば、いまや「エアコンなし」や「少ない収納」の物件は見向きもされません。
駐車場が必要とされているエリアなのに「駐車場なし」では、周辺の他の物件に大きく後れをとってしまいます。
1)、2)と同様に、PMのコンサルティングでリスクヘッジをすることが大切です。
4) 建物・設備・仕様の劣化
建物や設備・仕様の劣化によっても、賃料下落のリスクは発生します。
このリスクは、企画段階での工夫やメンテナンスのやり方で、ある程度回避することができるでしょう。
5)敷地内で自殺
敷地内や建物内で、自殺者が出てしまうことがあります。不可抗力の部分もありますが、入居者審査や入居者対応である程度回避することは可能です。
6)敷地内で殺傷事件
室内はもちろん、敷地内や建物内で殺傷事件が起きれば、かなり深刻なリスクとなります。
事件性のある入居者の死亡、自然死で何日間も放置、死体遺棄なども同様です。
5)の「敷地内で自殺」の場合も同様ですが、この種の事件が起きると、一般論として賃料はまず半額になると覚悟したほうがいいでしょう。
入居者審査や入居者対応で、極力回避するよう努力すべきです。
7)反社会的および不良借家人・変人が入居
オウム関連の施設が移転しようとすると、即座に周辺住民から反対運動が起きることはよく知られています。
同様に、暴力団の幹部が入居したり組事務所化したりすれば、賃料は極端に下がってしまいます。
また、同じ建物の入居者や近隣住民に迷惑をかけるような不良借家人や変人が入居しても、賃料に悪い影響を与えます。
騒音・ゴミ出し・違法駐車・ペット問題・共用スペースでの迷惑行為……入居者間や近隣とのトラブルが頻発します。
入居者審査でこうした人の入居を防止したり、入居後に判明したら入居者対応で退去するよう促す工夫と努力が必要です。
(C) 修繕・建物維持のコスト高
回避できるものとできないものがあります。
1) 建物固有の原因
手抜き工事や欠陥建築は論外ですが、劣化しやすい素材が使われていたり、修繕しにくい配管設計など、建物固有の原因で修繕・建物維持のコストが高くなるリスクです。
企画や設計の段階で十分な配慮をしたり、建築時の施工監理をしっかりすれば、相当部分を回避することができます。
また、メンテナンスのやり方でもある程度の対策は可能です。
たとえば、長期修繕計画を立てて予防的に修繕費を軽減したり、入居者へちょっとした「暮らし方のアドバイス」をして、設備の破損を防いで長持ちさせたり、修繕費を抑制できる材料を使用するなどの工夫です。
2) 市場によるもの
市場の変動によるコスト高は、不可抗力といえるでしょう。資材や人件費の高騰などが、これにあたります。
(D) 建物の欠陥
建物に欠陥があって、以下のようなリスクが発生することがあります。大きな改装工事が必要になるようなものであれば、かなり高額の出費になることもあるでしょう。
1)カビが出る。湿気が多い
2)給排水管故障
3)建てつけ等
4)遮音性
施工段階であれば、監理をしっかりすることで防げますし、完成後でも施工業者に瑕疵のあることがはっきりしていれば、その責任を問うことができます。
(E) 罹災
以下のような災害に罹災するリスクも、発生する可能性は少なくありません。
1)火事
2)水害
3)倒壊
4)地震
5)自動車の衝突等
基本的には損害保険でリスクを管理します。
火事にでもなれば、数百万円単位の損害が発生しますから、当然のことながら、火災保険に入らないなどということのないようにします。
ただし「倒壊」については、アメリカの9・11同時多発テロ以降、「テロ免責」がつくようになって保険対象外となっているようです。
また、入居者には必ず借家人賠償保険に加入してもらいます。
(F) 賃料の滞納
賃料の滞納は、最も発生しやすいリスクです。
入居者審査で防止するのが第一ですが、滞納時の督促なども含めて、管理会社の能力が問われるところです。
滞納の発生には以下のような原因が考えられますが、各項目ごとに解決のための独特のノウハウが必要です。
1)入居者の経済状況
2)入居者が失踪・行方不明
3)又貸し
(G) 損害賠償
以下のような理由で、入居者から損害賠償を請求されることがあります。
こうしたリスクは、管理会社の能力の有無で大きく違ってきます。
1)敷金清算等で入居者から訴訟
最近は退去時の敷金清算をめぐってのトラブルが増えています。原状回復のリフォーム工事費用は、入居者の故意・過失によるもの以外はオーナー負担が基本といわれています。
しかし、慣例では入居者にかなり請求しているケースもあり、これがトラブルのもとになっています。
2)入居者が盗難にあう(鍵の無変更・管理体制)
治安の悪化にともなって、盗難やピッキングの被害が急速に増えています。
したがって、いまや「セキュリティ」は入居者の最大関心事といっていいでしょう。
建物や設備、管理体制の不備によって起きた盗難ならば、入居者から損害賠償を求められる可能性は高くなります。
たとえば、入居者が替わったのに鍵を変更しなかった場合などです。
3)入居者が敷地内で事故にあう(施設賠償責任)
明らかな施設の欠陥や建物管理の不備によって入居者が事故にあった場合、「施設賠償責任」が発生します。人命にかかわった場合には、億単位の賠償を求められるおそれがあります。
そうした事故が発生しないように、メンテナンスをしっかりするのが第1ですが、「施設賠償責任保険」を活用するのも対策の1つです。
なお、よくある事故に「天井からの雨漏り」があります。原因が入居者の過失であれば入居者が賠償することになりますが、部屋の設備に原因があればオーナーに賠償責任が発生するおそれがあります。
(H) 法律の改正
法改正によって新たな負担が発生したり、オーナーに不利な条項ができることもあり得ます。
たとえば平成15年2月15日に施行された土壌汚染対策法は、土壌の特定有害物質による土壌汚染について定めた法律です。
この法律では、その汚染物質を出した人ではなくて、所有者に責任が求められる内容になっています。
その他、消防設備条例・税法・建築法規等の改正で、オーナーが思わぬリスクを負う可能性があります。
(I) 金利変動
金利が上昇し、借入金返済額が増加するリスクです。
たとえば年利が2%上がると、30年ローンで年間の負担増は借入金に対して1.3%になります。
金利の変動自体は不可抗力ですが、ある程度の金利上昇は折り込んでおくべきでしょう。
(J) 借家権の発生
「古くなった建物を建て直したい」あるいは「問題のある入居者に退去してもらいたい」……そう思っても、従来の「普通借家契約」で運用されていると、立ち退きをさせるのはなかなか困難です。
賃料を滞納しているような不良借家人でも、裁判で明け渡しの強制執行までやると、200万円以上かかってしまいます。
期間が満了すれば契約が終了し、問題のある入居者を自動的に退去させることができる「定期借家契約」での運用を強くおすすめします。
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