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(A) 物件の評価
1)賃料査定の傾向と問題点
物件の評価は、すなわち「賃料査定」のことでもあります。
その物件の価値を評価して適正賃料を査定しオーナーに提出します。
運営コストやメンテナンス計画なども含めた事業収支計画の基礎となる重要な業務です。
査定するのは、主に建築会社と管理会社です。建築会社の場合は、建築図面を起こして建築コストを算出し、賃料査定をして事業収支計画を作成するという企画段階で必ず発生します。
建築営業の成否に直結する業務になります。
管理会社の場合も「当社に任せていただけば、こんな賃料でリーシングします」と、「賃料査定書」の形で提出します。
やはり、管理受託営業に必須の業務といえるでしょう。
ここで問題なのは、建築会社・管理会社ともに「高く査定したがる」傾向があることです。ときには「無理な査定」といったほうがいいケースさえあります。もちろん「いくらで貸せるのか」はオーナーの最大関心事といってもいいでしょうし、高く査定すればオーナーが喜ぶのは事実ですが、そのことが必ずしもオーナーの利益と合致しないところに問題があるのです。
建築会社も管理会社も営業の一環の中で、どうしても「うちならよそより高く決められますよ」というようなオーバートーク営業をしてしまうことが、ややもすれば起こりがちです。
決まりもしない計画をベースに事業収支計画を組む建築会社や決まりもしない、もしくは「新築時だけなら、とりあえずこれでなんとか決まるかな」というようなギリギリの査定を提出する管理会社があります。
ときには、事実上は無理な金額を査定して提出し、とにかくオーナーの歓心を得て、とりあえず専任媒介仲介もしくは管理受託を得ようとするケースすらあります。それで決まらなかったら「すみません。
やはり決まりませんでした。市況が悪いからちょっと家賃下げさせてもらえませんか」といって、徐々に下げていくようなことを露骨にやる会社があったります。オーナーさんからすると、「この賃料で決まる」といわれて計画がスタートしたのに、「話が違うじゃないか」なんてことになってしまいます。
また、家賃保証の一括借り上げをする管理会社の中には、当初だけ非常に高い値段で無茶に借り上げて、2年後には「2年間運用が悪かった。
市況が悪いから下げさせてもらいます」と有無をいわさず下げるところがあります。
このように、最初から「2年経ったら下げればいい」と露骨に想定して、オーナーの歓心を得るために高い賃料で借り上げ契約を結ぶ悪質な会社もなかにはあります。
こうした査定は、やはり業界の倫理として問題があるし、オーナーさんにしてみれば騙されたという意識になるでしょう。
オーナーさんは、このような「無理な査定」にくれぐれも注意したほうがいいと思います。
2)10年後を見すえた査定と提案
営業マンとしては「いけますよ」とついつい言ってしまう気持ちもわからないでもありませんが、そこはやはり冷静にやるべきです。
そこで、“査定”というものを根本的に考えてみたいのですが、「家賃査定は非常に恐いもの」というのが私の実感です。
というのは、素人でもある程度の査定は簡単にできてしまうからです。
場所(どこ) と 面積(何?)→ 素人でもできてしまう恐さがある
場所と面積、つまりどこに建っているかと、その物件の専有面積で、ある程度できてしまう恐さがあるのです。
賃料の一覧表を見たり、ほかの物件をサッと調べたら「だいたい2DKで8万円かな」なんて簡単にできてしまう恐さ。
そして、そう大きな誤差がないという恐さ。
なんとなく「8万円でしょ」なんて話したら8万円で決まるという恐さ。
新築だけは決まってしまう恐さ。この「新築マジック」「新築魔力」ということを、もっと重要視しなければいけません。
新築だから、新しいから相場の賃料で決まっているという現実は、アパート・マンション経営の構造的な問題点だと私は思っているのです。
わかりやすくいうと、「10年後を見すえた賃料査定」をしなければいけないということです。
下の表にあるように、賃料8万円で部屋数10戸の2つの物件があったとします。
新築時には、両者の差はありません。A物件は良い物件ですから今は8万円、10年後も8万円で決まるでしょう。
もしくは、それほど下がらず7万8000円前後で決まる物件です。
それに対してのように、新築時こそ8万円で決まっていますが、10年後には間違いなく1万円は下がるのではないかと想像できる物件もあるわけです。
1か月で10万円も賃料がダウンしてしまいます。
※[図表]10年後の賃料収入は、書籍「アパート・マンション経営企画運営マニュアル」でご覧いただけます。
プロパティ・マネージャーに求められるのは、まず10年後の賃料を把握すること。
次にB物件のような悪い物件だったときに、その事実をオーナーに理解し認識してもらうことです。
そして対策を考えて、「今からでもこう変えたほうが、企画をこうしたほうがいいのではないですか」と、企画アドバイスをするのが本当のプロだと思うのです。
オーナーも、「8万円で決まった」と喜んでいるだけではなくて、余裕で決まっている8万円のA物件か、やっとの思いで決まっている8万円のB物件なのか、その大きな差を自覚しなければいけません。
一方、その「大きな差」があることを建築会社や管理会社は現場のプロとしてわかっているはずなのですから、それを指摘してなるべくA物件に近づけるようにアドバイスをするべきです。
したがって、「10年後を見すえた家賃査定」ということは、すなわち企画だということです。
今の賃料はこうだけれども、10年後を見据えて「こうあるべきだ」という提案営業ができるかどうかが“肝”になってくるのではないかと思います。
逆に、オーナーさんのほうも「現状はこうだが何か問題点はないの。
こうしたほうがいいというところはないの」とアドバイスを求められたほうがいいでしょう。
中古の場合も基本的には同様です。いろいろな瑕疵やもう変えられないところがあったり、設備・仕様が古かったり陳腐化していたりといったことが、当然あります。
現時点で「この古さと陳腐化だと8万円です」と、そのまま査定はしますが、「このままだったら遠からず7万円になってしまうから、ここを中・短期的にこう変えるべきだ」という提案をすべきじゃないでしょうか。
もちろん中古でも、「もうこれ以上は下がらないだろう」と思われる物件もあると思います。
3)査定の方法
査定の第一歩は、まず対象案件のあるそのエリアで「標準的な物件と間取り」を選択します。
いきなり特殊な物件・間取りで調べ出しても、わからないからです。土地の鑑定評価でも100?30坪の標準的な住宅地にある標準的画地を査定するように、賃貸でも同様の手法をとるわけです。
たとえばそのエリアに軽鉄の2階建てアパートが多いのであれば、軽鉄の2階建てアパートで中部屋の日当たりも普通で、特に問題のない一般的な1Kタイプや2DKタイプをまず選択をするのです。
そして、自分が査定したいのは本当は1LDKであっても、1LDKは少ないでしょうから、その選択した1Kタイプや2DKタイプの物件だったら賃料がいくらなのかを取材します。方法は地元業者へのヒアリング、そして情報誌等です。
次に募集図面を入手して、その図面をもとにとにかく現調(現地調査)です。
賃料査定で一番肝心なのは、こういう物件はいくらで決まっているんだ、という現場を見ること。1に現場、2に現場、3、4も現場で5に現場です。
とくかく見に行くことが大切です。
不動産は100あれば100の顔があって、全部違いますから、「なぜこの物件がこの値段で決まっているのか」を肌で感じなくてはいけないのです。こうした「エリアマーケティング」を現地で行うことによって、相場観が養われます。これが極めて大事なのです。
そして次に、対象案件の査定に入ります。査定対象案件の物件に近いものを比較物件として選択して、「比較物件と比べたらうちの物件はこういうところが良い、悪い」と、あらゆる角度から比較検討するわけです。その際に留意すべき視点は、第4章の「2 問題点の発見」の項にまとめてありますので参照してください。
(B) 管理受託
1)物件の引き渡しと管理(PM)システムの確認
新築であろうと中古であろうと、管理受託が決まったら即座にその物件の情報・データをきちっと取材し、チェック・記録をしなければなりません。
1つの建物には実にいろいろな情報がありますから、物件の引き渡し時にそれをきっちり把握しておくことが大切です。
面倒な作業なのでともすれば後回しになりがちですが、物件が多くなればなるほど、「あの物件どうだったっけ」ということなり、結局その現場に見にいかないとわからない、なんてことになりかねません。
また、物件数がせいぜい10数棟であれば覚えていられるかもしれませんが、数十棟になると人の記憶に頼ってはいられません。
データとして残しておかなければ、担当者が辞めたら何もわからなくなってしまいます。以下のような項目をしっかりチェックして、記録に残しておくことが重要です。
実際の作業では、チェック項目を一覧にした「チェックシート」を使用して、チェックもれのないように留意します。物件の引き渡し時にチェックする主な項目は、以下の通りです。
・外回り・共用部分
・現地案内図作成のための物件全体の配置図
・各号室の間取り
・専有部分の仕様・設備
・建築会社の担当者との確認事項
・建築会社(施工会社)への今後の連絡先
・オーナーに確認・提案する項目
・オーナーに説明・報告・確認する事項
・オーナーにお願いする事項
・公共機関連絡先
・ごみ集積所配置図
・管理物件登録シート(データベース用の管理物件登録シート)
・撮影箇所
また、この段階で管理システムの説明をしっかりとする必要があります。
マネジメントフィーなど、プロパティ・マネジメント特有のシステムについても提示・折衝を行ないます。
集金管理システム(集金のみ、滞納保証、一括借り上げ<空室保証>)についてもそれぞれの違いをよく説明しながら提案し、どのシステムを選択するのか意思決定をしてもらって、管理契約書の締結に進みます。
2)管理替え
「管理替え」とは、他社が管理していた物件あるいはオーナーが自主管理していた物件が、自社の管理に替わることです。
自社管理の物件が増えるわけですから、一見いいことずくめのように思われます。しかし「管理替え」には独特の要素がともないますから、下手をすると思わぬトラブルを背負い込んだり、予想以上の手数がかかってしまうことがあります。その特徴をよく把握し、確認事項を一つひとつチェックして、慎重に対処することが大切です。
なお、「管理替え」の営業については別章で述べていますので、参照してください。
管理替え物件には、以下のような種類があります。
・「他社管理」からの管理替え
・「オーナー自主管理」からの管理替え
・「無償管理」からの管理替え
管理替えの際には、入居者に関して次のような項目を確認して、対応の限度をオーナーに提示することが大切です。
・契約書類の有無
入居申込書・身上書
契約書
住民票
連帯保証人署名・実印押印
連帯保証人印鑑証明書
連帯保証人承諾書
・「与信」「入金履歴」「入金状況」の確認
・「家財保険」の確認
また、「管理替え通知」の投函・連絡も忘れてはいけません。
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