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(A) 収益の種類
プロパティ・マネジメント会社の収益には、次のような種類が考えられます。
[マネジメントフィー]
従来型の管理会社は、以下のようなマネジメントフィーを主な収益源としています。
1)月次管理料――マンスリーマネジメントフィー
「物件管理業務」に対してオーナーから取得する管理料で、月額賃料などの5〜7%が一般的です。
2)募集管理料――リーシングマネジメントフィー
自ら仲介はやらない場合に、募集業務に対してオーナーから取得する管理料で、いわゆる仲介手数料とは別のものです。賃料の1か月分だったり全然もらえなかったり、募集管理料の有無と金額はさまざまです。
「絶対に出さない」という文化の場所もありますし、1か月から1.5か月のところもありますので、自社で仲介もやっていれば、仲介手数料が実質的にはダブルで2か月になるケースも少なくありません。
3)更新管理料――リピートマネジメントフィー
更新料を取得する慣習の有無によって違いがあります。更新料取得の慣習がある地域は、東京・京都などです。
・取得する慣習のある地域では、新賃料の0.5〜0.75か月分程度
・取得する慣習のない地域では、5,000〜10,000円程度の事務手数料を入居者からいただくのが一般的のようです。
4)内装リフォーム管理料――リフォームマネジメントフィー
入居者退去毎にお部屋の原状回復をするときに業者を手配し、工事を監督する手間のことですが、「管理料」として取得している例は少なく、たとえば業者に1000円でやってもらって、1300円でオーナーや入居者に出すという形で収益にしているケースが一般的です。
できればオーナーに対して「この部分で10%あるいは20%の利益をもらっています」と開示するのが本来の姿ではないでしょうか。
[コンサルティングフィー]
1)〜4)のマネジメントフィーに加えて、プロパティ・マネジメント会社は以下のような「コンサルティングフィー」も収益源とします。
5)建築プロデュース
建築プロデュースには、次の2パターンがあります。新築とリニューアルの違いや物件の規模、総建築費、関わり方の程度などによってコンサルティングフィーは千差万別ですが、おおむね建築費の1〜5%です。
i.新築プロデュース
ii.リニューアルプロデュース
6)借家権の権利調整
いわゆる「立ち退き交渉」です。
立ち退き交渉は、みんなが積極的にはしたがらない少々“重い”仕事ですし、ノウハウも必要です。
それだけに、やれば付加価値になりますし、管理受託のための大きな武器として使えます。
借家権の権利調整のコンサルティングフィーは、交渉の難易でかなり違ってきますが、1戸あたり20万円が目安になるでしょう。
本業の契約(建築請負や管理受託)を条件とした上で立ち退き交渉を引き受ければフィーよりも大きな成果をもたらします。
7)借地権の権利調整
借家権の場合と同様に、いくつかのハードルがありますが、成功すればそれなりの成果を得られます。
収入としては、借地権や底地権の売買が伴いますから、売り主から手数料として売価の3%、さらにコンサルティングフィーとして3%が得られます。
8)相続コンサルティング
相続というと税理士の独壇場のように思われていますが、実際の相続対策はほとんど「不動産対策」のこと。
したがって、不動産運用の現場に精通しているプロパティ・マネージャーにこそふさわしい仕事といえます。
もちろん、実務レベルでは税理士、司法書士、不動産鑑定士、測量士など専門家の協力も必要ですが、相続人の立場に立って相続対策を立案・推進するのはプロパティ・マネージャーの仕事です。
個別のケースごとに仕事の内容はさまざまですから、フィーについては一概にいえません。
[直接仲介する場合]
9)仲介手数料
自社で直接、仲介業務をしている場合は、仲介手数料が大きな収益源になっていることが多いと思われます。
手数料は賃料の1か月分相当額が上限です。
(B) 収益構造の問題点と今後
1)「仲介手数料がメイン」の問題点
従来型の管理会社は、その多くが仲介手数料を主たる収益源にしています。
その結果、
・オーナーとの利益相反行為がある
・仲介物件が増えるので、入居者の解約が実は歓迎である
・空室に対して鈍感である
などの問題を抱えていることはすでに述べた通りです。
収入のメインとなっている仲介手数料そのものも、入居者の争奪戦が激化しているために割引を迫られていて、「手数料半額」や極端な場合には「手数料なし」のケースさえ見受けられます。
また賃貸仲介でも売買仲介と同じように、オーナーと入居者の間に不動産業者が2者入る場合が一般的です。
元付け業者とは、オーナー側に直接接している業者のことをいい、客付け業者とは入居者側に接して物件を案内したりする業者のことをいいます。
※[図表1-2]賃貸仲介の元付、客付は、書籍「アパート・マンション経営企画運営マニュアル」でご覧いただけます
仲介手数料は宅建業法で賃料の1か月相当分が上限とされていますから、それを不動産業者2者で分け合わなければなりません。
こうしたことから、実際にはオーナー側から「広告料」として賃料の1〜2か月分が支払われるのが慣習化しています。
「広告料」の名目ではあっても、実質は入居を決めてくれた礼金の役割を果たしていますから、法的には微妙な問題があるといえます。
加えて、人気がなくて入居者が入りにくい物件ほど広告料が高いという傾向があります。
逆にいえば、広告料が少ない物件、入居者にとって魅力的な物件を扱いたがらないところが出てくるという問題があります。
ともあれ仲介手数料減、転居者の減で、「仲介手数料頼み」の経営はどんどん厳しくなってくることは間違いありません。管理会社としては本来のマネジメントフィー収入をはじめとした、収益源の拡大が急務だとといえるでしょう。
2)「管理料なし」の問題点と対策
東京でも例がないわけではありませんが、とりわけ地方ではいまだに無償管理していて、「管理料なし」で物件を預かっている管理会社が多いようです。
募集は専任でやらせてもらって仲介手数料をもらい、クレームの対応やメンテナンスの手配などといった管理業務は無償で行っているケースです。
これは、管理会社というよりは仲介会社としてのスタンスが強く、仲介手数料さえ手に入ればあとはサービスでいいや、としているわけです。
しかし、きちんとした管理をするにはそれなりのマンパワーと経費がかかるのは当然です。
1)で述べたように、仲介手数料収入に多くを期待できなくなってきている現実があるのですから、オーナーを説得して管理会社としては当然のマネジメントフィーをもらえるよう極力、努力すべきではないでしょうか。
なおオーナーの説得法については、視点は少々異なりますが、第5章の「管理料支払いの説得と納得」の項で述べていますので参照してください。
3)建築プロデュースでの利益
私が力を入れている建築プロデュース分野の場合は「紹介料」という慣習があります。私の会社(アートアベニュー)は、建築会社からそうしたバックをいっさいもらわないでやっています。それは、バックをもらわないでもコンサルフィーをもらえるからです。
建築会社からのバックはふつう3%程度あることが多いですから、1億円の建設費なら300万円出るわけです。
それをもらわないで、お客さんのほうから200万ないし300万円のコンサルティングフィーを頂戴します。
もちろん、昔はもらっていた時期もありましたが、CPM(不動産経営管理士)に挑戦するようになってからもらわないことにしたのです。
くれるものを「いらない」というのですから、経営者としてはある意味で「決断」でした。
でも、そのおかげでコンサルティングフィーをもらえるようになったのです。
CPMの考え方からすれば、発注先からバックをもらうのは明らかな利益相反ですから、してはいけないことなのです。
とはいっても、日本の現状はそう甘くはありません。
コンサルフィーを払うという発想があまり定着していないこともあって、施主の理解を得られない人が建築プロデュースなどの業務をやって、経費をもらわなければ赤字になってしまうという現実もたしかにあります。
そうしたケースに対してまで、「もらってはいけません」とは必ずしもいい切れないものがあります。
CPMの講習では「もらってはいけない」と教えられました。情報はすべて公開しろといわれました。
私はCPMですからもらっていませんし、情報公開しています。
みなさんに「同じようにやれ」とはいいませんが、それが理想形だということはわかっていただきたいと思います。
また、それが本来のあるべき姿かもしれません。
ただ日本には日本の文化があることも、一概には否定できません。
阿吽
の呼吸でオーナーもうすうすわかっていて、それをあえて口には出さないで、黙っている場合もあります。
ですから「少し紹介料が出ます」くらいまではいうパターンと、「いくらもらいました」まで情報公開して納得してもらう方法もあるでしょう。
それは、それぞれの力量と実績に応じて、ケースバイケースで判断していただきたいと思います。
(C) オーナーの利益と管理会社の利益
1)「いただくフィー」を上回る効果をあげる
前項では、プロパティ・マネジメントの倫理重視の考え方にもとづいて、コストオンの問題について述べましたが、この「倫理重視」はゴチゴチの倫理至上主義ではなく、そのほうが「ビジネスになる」という一種のビジネス戦略としての側面もあるのです。
そこで、実際に「ビジネスになる」という私の体験をご紹介しましょう。
自慢話めいて恐縮ですが、私が手がけた愛知県のあるプロデュース案件では、たった1時間のプレゼンで「お任せします」といわれました。
どの建築会社が、たった1時間説明しただけでそういわれるでしょうか。
プレゼンでの私のトークはこんな具合でした。
――私たちはプロパティ・マネージャーですから、うちに任せたほうがいいプランを提案できます。
お客さんのためにいちばんいいことをしますし、建築会社からいっさいバックをもらわないで、お客さんのエージェントに徹し切ります。
だからこそ、お客さんから私はフィーをもらいたい。
お客さんの味方になるためには、お客さんからお金をいただかないとやれないのです――
そのときは200万と提示したのですが、「200万円いただいて、短期的にみても長期的にみても、200万円以上の効果は間違いなくあげます。
これでよかった、得したと思ってもらえる自信があるから、うちに払ってください。
そのかわり正直にやるし、建築会社とはいっさい癒着しません」ともいいました。
バックの紹介料をもらうと、どうしても建築会社との間でお互いに甘えが生じるから、それはやりたくありません。
でも、実際に時間も経費もかかるのだから,誰かからもらわないとプロデュースはできません。
だからフィーをいただきたいのです……このように、正面から堂々とプレゼンテーションすることが大切だと思います。
また、私の会社の管理契約書には「リフォーム業者などの出入り業者からは、紹介料のたぐいはいっさいいただきません」と書いてあります。
これが、オーナーさんたちからはかなりの評価をいただいています。
このときは、オーナーさんとの相性も合いましたし、私のいうことを信じてくれたということもあるでしょうが、たった1時間あわただしく話しただけで「お任せします」といってもらえたのは、尋常ではありません。倫理を強調することで、こんな効果もあるのです。
ともあれ、オーナーさんと管理会社は一種の運命共同体です。オーナーさんからいただくフィーを上回る成果をあげ、オーナーさんの収益に貢献するからこそ、プロパティ・マネージャーは収入を確保することができるのです。
オーナー利益の拡大と管理会社の収益拡大は同時に実現されるということを、オーナーさんにもわかっていただき、自らも肝に銘じたいものです。
※[図表1-2]アートアベニュー管理委託契約書は、書籍「アパート・マンション経営企画運営マニュアル」でご覧いただけます。
2)求められる「オーナーの意識変革」
このように、「フィーを払う」ことに対してオーナーの理解を得ることは非常に大切ですし、また難しいことでもあります。
しかし一面では、オーナー自身のためにもこれまでの常識にとらわれた意識を変革することが求められている、ともいえます。
どうすれば自分の利益になるか。それは管理料を削ることではなく、払うべきフィーは払って自分のために働いてもらう……そうした意識に転換してもらうよう、オーナーさんへの働きかけを続けていかなければならないと思っています。
そこで、前述した『金持ち父さん貧乏父さん』(筑摩書房)のなかに心強い一文がありましたのでご紹介します。
同書の251ページには、「ブローカーにたっぷり払う――忠告の力」という小見出しがついた以下のような文章があります。
<家の前に「売家――売主直売」という看板が出ているのはよく見かける風景だ。
また、近頃ではテレビで手数料の割引を広告するブローカーたちもよく見かける。
金持ち父さんが私に教えてくれたやり方は正反対だ。
金持ち父さんは「その道の専門家」に充分な報酬を支払うことが大事だと信じていた。
私も同じやり方でやってきた。いま、私は弁護士や会計士、不動産ブローカー、株式ブローカーなどに相当な額を払っている。
その理由は、もし彼らが本当のプロならば(これが実に肝腎なことだが)、彼らに助けてもらえばかならずお金が儲かるはずだからだ。
彼らが自分の仕事の報酬としてより多くの金を得ることは、とりもなおさず、私自身がより多くのお金を儲けることを意味する。
現代は情報の時代だ。情報には値段がつけられないほどの価値がある。いい不動産ブローカー、いい株式ブローカーならば、いい情報を与えてくれるばかりか、きちんと時間をとっていろいろ教えてくれる。
私はそんなブローカーを何人か知っている。
そのなかには、私がお金に困ったときにいろいろ教えてくれた人もいる。
悪い時期を乗り越えたいまも、彼らとはいい仕事をしている。
仲介をしてくれる人に支払うお金は、彼らが与えてくれる情報をもとに私が得ることのできる収入に比べたら微々たるものだ。
自分を助けてくれた不動産ブローカーや株式ブローカーのふところがうるおうのを見るのはうれしい。
なぜなら、たいていそういうときは、私がたっぷりお金をもうけたときだからだ>
<大事なのは、顧客の利益を最大にすることをつねに心がけるブローカーを見つけることだ。
時間をさいてあなたにいろいろ教えてくれるブローカーはたくさんいるし、そういう人たちはあなたにとって最高の資産となり得る。あなたが正当な扱いをすれば、たいていのブローカーはそれに値するだけの誠意を見せてくれる。
もしあなたが彼らの手数料を節約することばかり考えているとしたら、彼らがあなたのために真剣に働きたいと思わなくなってもなんの不思議はない。これはごくあたりまえの話だ。
前にも話したように、自分のビジネスを始めるにあたって大切な管理能力の一つは人の管理だ。
多くの人は、「管理する」というと、自分より能力的に劣っている人、自分より地位が低くて自分が権力をふるえる相手、たとえば会社の部下などのことしか考えない。……人を管理することの本当の意味は、専門分野で自分よりすぐれている人をうまく使うこと、そして充分に報酬を与えることにある。会社に重役会があるのはこのためだ。
たとえ個人でも同じことだ。
これこそがファイナンシャル・インテリジェンスだ>
私の経験でも、本当のいい金持ちは払うべきお金はちゃんと払います。
うまくいかない人に限ってケチケチしますし、そういう人はたいがいトラブっています。
もちろん経費を切り詰めることも大事ですが、必要なところにはしっかり払う人のほうが、それ以上のお金を得ることができるのですから、かえってお金を大事にしているといえるでしょう。
「金持ち父さん」はお金のかけ方を知っているのです。
ただし、文中に「もし彼らが本当のプロならば(これが実に肝腎なことだが)」とあることを忘れてはいけません。
もっとも大切なのは、私たちが「本当のプロ」になることなのです。
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