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(A) 賃貸管理業の現実
1)オーナーの嘆き――その1
前述した「貧乏父さんのBマンション」のオーナーは、管理会社をどう見ているでしょうか。
管理会社は、入居者を決めて契約して、クレームを受け付けてメンテナンスをして、家賃を集金・送金して……あらゆることをやっています。
ほとんどのスタッフは、精一杯まじめにやっているかもしれません。
しかし、オーナーには大きな不満があるのです。
その不満とは、物件単位(オーナー単位)で収益性を考えてくれるスタッフや部署がないことです。
――景気が悪いせいもあるが、稼働率が下がっているし年間の決算をしたら去年より収益が減っている。
管理会社が一生懸命やっているのはなんとなくわかるが、ちゃんと私の賃料収入全体を見てくれている人は誰なのか。
それも収益の最大化、年間を通して私の家賃収入をどう上げるか、どう下げないかを見てくれている人は誰なのか。
いったい、誰が私のマンションを見てくれているの?――
去年より、今年になってオーナーのキャッシュフローが低下していることに、管理会社の誰も気づいていないし、気づこうともしない。
そこにオーナーの「慢性的な不満」があるのです。
2)「タテ割り行政」を批判するけれど……
誰も気づかないのは、ある意味で当然かもしれません。
というのは、現在の管理会社の構造にその原因があるからです。
従来型の日本の管理会社は、主に以下のような5つの業務をこなしています。
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(1)管理物件の仕入れ
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開発営業部
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(2)仲介(入居者付け)
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仲介営業部
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(3)日常管理(クレーム・メンテナンス対応等)
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管理部
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(4)賃料の集金と送金、滞納処理
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経理部
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(5)レポーティング(レポート発行)
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管理部
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分業・特化したほうが効率がいいので、当然、右側のような各部署に分かれて業務を行ないます。
(1)から(5)までを通して全体を把握して、物件ごとに収益性を判断してオーナーにアドバイスする人も部署も、どこにもありません。
したがって、オーナーがこんな疑問を抱くようになってしまうのです。
――仕入れ担当の人は管理委託を契約するまではしょっちゅう来て「いい管理をしますよ」といっていたが、契約した瞬間に離れて実務の部署に回すから、それっきり顔を見たことがない。
仲介の人は電話がかかってきたと思ったら、「決まらないから家賃を下げてください」とか、「フリーレントにさせてください」とか、そんなことばかりいう。
クレーム対応の人は、一生懸命対応してくれているようだが、「変な人が入居してしまって、うちでは手に負えないから弁護士に頼んでほしい」といってくる。
メンテナンスの人は、「給湯器が壊れて交換しなければいけないから10万円払ってほしい」とか、「原状回復費用で入居者がゴネているから、オーナーさんが払ってください」など、「金を払ってくれ」しかいわない。集金・督促の人からは月1回、支払い明細が送られてくるだけで、紙だけのお付き合い。
たまに電話がかかってきたと思ったら、「ちょっと数字を間違えました。多く振り込みすぎたので、来月相殺させてください」という話。
皆さん一生懸命やっているようだが、私にとっては去年より完全に収益が落ちていることが大問題。
景気も悪いかもしれないが、この会社の人は賃料を下げているのを知っているのかな。
壊れたものはしょうがないが、メンテナンスで「お金を払ってくれ」といってくる人は、私の収入が去年より減っているのを知っているのかな。
「弁護士に頼んでくれ」というが、弁護士さんに払う費用がいくらか知っているのかな。
「滞納督促で50万から100万かかります」と平気でいうが、去年より収入が落ちていることを知っていていっているのかな?
支払い明細を送ってくる経理の人は、こんな事情を全部わかった上で送ってくれているのかな。ただ数字を入れているだけなんじゃないの――
もちろん私の会社でも、大なり小なり同様のことがあるのは否定できません。
日本の官僚は「縄張り意識」が強烈で、世界有数の「タテ割り行政」とよく批判され、揶揄されます。
しかし、同様のことが賃貸管理の現場で起こっていることを知らなければなりません。
各部署では目先の業務の推進や効率が優先されて、「オーナーの利益」を考える人が誰もいないという現実は、国益や国民の利益より各省の利益、「省益」を優先して行動する霞が関のお役人たちと、構造的には何ら変わることはないといえるでしょう。
3)不動産管理の違い――アメリカと日本
こうした日本の管理会社の現実も、一面では無理からぬところがあると私は思っています。
というのは、物件の規模に問題があるからです。
アメリカのプロパティ・マネージャーは、1人で1000戸から1500戸を管理しているのが当たり前です。
日本では、1人で1000戸なんかとても管理できないことは、皆さんよくご存じの通りです。
では、なぜアメリカではそれが可能なのでしょうか。
それは、1つの物件あたりの規模が大きいからです。
1棟で200戸なんてザラですから、1000戸といっても5棟前後しかありません。だから、1人で全部を把握してトータルにコンサルタントできるのです。
もちろん、1人ですべての業務を行なうわけではありません。
上位のプロパティ・マネージャーが1人いて、アシスタント・プロパティ・マネージャーが補助業務を行ないます。
そして、物件ごとにオンサイト(現場)のプロパティ・マネージャーに実際の運営は任せます。
1棟あたり200戸だとすれば、現場のオンサイト・マネージャーが募集もやり、メンテナンスもやりというように、すべての業務を推進します。
オンサイト・マネージャーの下にもスタッフがいて、ベンダー(業者)がいつもぐるぐる回っている……そんな状態が一般的です。
それに対して日本では1棟あたり約10戸からせいぜい15戸程度が平均ですから、棟数はアメリカの約20倍です。
1000戸管理しているとすると、100棟前後の物件数になってしまいます。
すると、募集図面も100枚あるわけですから、1人で全体を見るなんてとてもできない相談です。
したがって、効率化のために個々の部署に分かれて、分業・特化せざるを得ないのです。
その結果、リーシングの部署、メンテナンスの部署、集金の部署と、どんどん省に分かれていって、それぞれが省益を主張し始めます。
すると、タテ割り行政になって横のつながりがなくなります。
「横のつながり」とは、全体を俯瞰して国益すなわちオーナーの利益を考えること。
物件全体のバランスをとってオーナーにアドバイスする部署が日本の管理会社にない訳は、こうした日本とアメリカの構造的な違いもあると考えられます。
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